50代社員のセカンドキャリア調査:中小企業が今からできる人材活用のヒント
50代社員のリアルな悩み
「もうすぐ定年だけど、まだやりたいことがはっきりしない…」
「今の会社に残っても、給与や役職が下がるのが不安…」
「転職したいけど、新しい職場にうまく馴染めるか心配…」
こうした声は、一般的にもよく聞かれるはずです。
実際、45歳~59歳の社員に行われた調査でも、今後の働き方について迷っている社員が多いことがわかりました。
今回は調査結果をもとに、50代社員の働き方意識の傾向と、中小企業が現場ですぐに活かせる実務的なポイントを整理しました。
調査結果のポイント:50代社員の働き方の意識
1.「まだ決めていない」社員は3割
調査では、将来の働き方を「まだ決めていない」と答えた社員が31%でした。
現場の感覚でも、50代社員は「このまま今の会社で働き続けるか」「転職や独立を考えるか」で迷う人が多く、相談の場がないと不安が募ります。
2.転職希望は定年前・定年後も合わせて約3割
「定年前・定年時に転職したい」「定年後、同じ会社で雇用延長した後に転職したい」と答えた社員は全体の約3割。
一方で、「定年を機に働くのをやめたい」「定年後に同じ会社で雇用延長して働くのをやめたい」も同率でした。
つまり、50代社員の働き方の希望は多様で、経営者は柔軟に対応する必要があるということがわかります。
3.転職の動機は「挑戦」と「経験活用」
定年前・定年時に転職を希望する社員の理由は主に次の3つです。
①新しい仕事に取り組みたい(34%)
②自分のスキルや経験を他社や独立で活かしたい(26%)
③役職定年や定年によって給与が下がることが不安(19%)
つまり、「今の会社ではできない挑戦がしたい」「自分の経験をもっと活かしたい」という前向きな理由と、処遇面の不安という現実的な理由の両方があります。
4.同じ会社で働き続けたい社員の理由
定年後も同じ会社で働きたい社員は、6割が「これまでの経験やスキルを活かせるから」と回答。
一方で、転職先に馴染めるか不安な社員も4割いました。
中小企業では、こうした社員に「ここで経験を活かせます」「無理なく働けます」と具体的に伝えることで、安心して働き続けてもらいやすくなります。
5.退職予定でも中小企業での活用チャンスあり
「定年を機に退職予定」や「まだ決めていない」と答えた社員の中にも、自分の知識・経験が必要とされる職場や、自分に合った中小企業があれば転職を考える層が約4割います。
つまり、中小企業にとっては、経験豊富な50代社員を採用するチャンスがあるとも言えるということです。
中小企業が押さえるべきポイント
1.キャリア相談や情報提供が定着につながる
50代でもまだキャリアの方向性を決めかねている社員は多く、会社からの積極的な情報提供や相談機会を持つことで安心感が生まれ、定着率アップにつながります。
2.中小企業でも採用のチャンスは大きい
転職を前向きに考えている層の約4割は、中小企業への転職も視野に入れています。経験やスキルを活かせる具体的な業務内容を示すことで、採用の可能性が広がります。
3.不安への配慮が定着につながる
「新しい職場になじめるか不安」「給与が下がるのは心配」という理由で退職や転職を考える人がいます。待遇や働き方の柔軟性を明確に示すことが重要です。
実務ワンポイントアドバイス
1.キャリア相談窓口の設置
社長や部門責任者が直接相談に応じる仕組みを作るだけでも、社員の不安が軽減されます。
2.中小企業ならではの魅力を伝える
「自分の経験を活かせる」「新しい挑戦ができる」と具体的に示すことで、50代の転職検討層を引きつけられます。
3.柔軟な雇用延長制度の導入
「後進の育成など一定の貢献に応じたポイント制手当」や「短時間勤務などの柔軟な労働時間」の雇用延長策を用意すると、定年後も無理なく・不安なく働いてもらいやすくなります。
まとめ
- 50代社員の働き方意識は多様で、まだ決めていない層も3割
- 転職希望や退職希望は一定数いるが、中小企業でも活用できる層が存在
- 経営者は、キャリア相談の場や柔軟な働き方の選択肢を提示することで、経験豊富な50代社員を採用・定着させることができる
50代社員のキャリア意識を理解し、現場で具体的に対応できる体制を整えることが、組織の安定と成長につながります。

人事組織コンサルタントとして『ヒト』に関する課題の克服にも尽力。
経営理念の作成・浸透コンサルティングを得意とし、人事評価制度の作成や教育研修講師も含め、企業組織文化の醸成に取り組む。
経営理念に関する電子書籍を多数出版。
»出版・メディア実績