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年休取得率66.9%は何を意味する?中小企業が知っておきたい最新「就労条件総合調査」の読み解き方

 

「過去最高」の数字をどう受け止めるか

厚生労働省が公表した2025年「就労条件総合調査」では、年次有給休暇の取得率・取得日数ともに過去最高を更新しました。一見すると「日本の働き方はかなり改善してきた」と感じるかもしれません。しかし、この数字をそのまま自社に当てはめてよいのかというと、必ずしもそうではありません。特に従業員100人未満の中小企業では、数字の“裏側”を正しく理解することが重要です。

2025年「就労条件総合調査」のポイント

今回公表された調査結果の主なポイントは次のとおりです。
・年次有給休暇の平均取得率:66.9%(前年65.3%)
・平均取得日数:12.1日(前年11.0日)
いずれも1984年以降で最高水準となりました。

また、賃金制度における「諸手当」については、常用労働者一人あたり平均5万4,500円で、所定内賃金に占める割合は15.9%となっています。
手当の支給状況を見ると、「通勤手当」が約9割と最も多く、次いで「役付手当」、「家族手当・扶養手当・育児支援手当」などが続いています。
この調査は、従業員30人以上の企業を対象に行われたものです。

中小企業は「平均値」に振り回されない

社会保険労務士の立場から見ると、今回の数字で最も注意すべき点は「調査対象」です。
この調査は30人以上の企業が対象であり、100人未満、まして10人・20人規模の企業の実態とは差があるケースも少なくありません。

年休取得率が上昇している背景には、法律による年5日の取得義務化だけでなく、人材確保を意識した大企業の制度整備も影響しています。一方で、中小企業では「人手不足で休ませたくても休ませられない」「特定の社員しか休めていない」といった悩みが“フツー”です。

また、諸手当についても「みんな出しているからうちも続ける」という発想は注意が必要です。手当が増えるほど賃金体系は複雑になり、将来の見直しが難しくなるリスクを抱えることになります。

中小企業が今すぐ確認すべき3つの視点

最後に、実務上すぐに確認していただきたいポイントを整理します。

① 有給休暇は「取得率」より「取得の偏り」を見る
全体の取得率よりも、「誰が・いつ・どれくらい取っているか」を確認しましょう。一部の社員だけが消化している状態は、将来的な不満やトラブルの火種になります。

② 手当は「目的」と「出口」をセットで考える
その手当は何のために支給しているのか、将来見直す場合はどうするのか。導入時に明確にしておくことが重要です。

③ 数字の背景を社員と共有する
「なぜ今この制度なのか」「会社として何を大切にしたいのか」を言葉で伝えることで、制度は初めて機能します。

制度を機能させる鍵は「経営理念」との接続

年次有給休暇の取得率や各種手当は、単なる労務管理の話ではありません。
中小企業において本当に重要なのは、それらの制度が「経営理念とつながっているか」という点です。

① 有給休暇は「会社として大切にしたい働き方」を映す鏡

有給休暇の取得促進は、法律を守るためだけに行うものではありません。
「社員が心身ともに健康で、長く安心して働ける会社でありたい」
「無理を前提としない働き方を大切にしたい」
こうした経営理念があるのであれば、有給休暇はその理念を“見える形”にする制度です。経営理念になかったとしても、こう思わない経営者はいないでしょう。

理念が言葉だけで、実際には休みづらい雰囲気がある場合、社員は「この会社の言っていることと、やっていることは違う」と感じてしまいます。
取得率そのものよりも、「理念どおりの働き方が現場で実現しているか」という視点で確認することが重要です。

② 手当は「理念に基づく評価」になっているかを点検する

通勤手当や役付手当、家族手当などの諸手当は、長年の慣習で続いているケースが多く見られます。
ここで一度立ち止まり、
「この手当は、会社が大切にしている価値観と合っているか」
を考えてみてください。

例えば、
・チームワークを重視する理念なのに、個人色の強い手当ばかりになっていないか
・成長や挑戦を掲げているのに、年齢や在籍年数中心の手当設計になっていないか

理念とズレた手当は、社員の行動もズレさせます。
手当は賃金の問題であると同時に、「会社の価値観を伝えるメッセージ」でもあります。

③  数字を追う前に「理念が現場で生きているか」を確認する

最新調査の数値を見て焦る必要はありません。
中小企業にとって重要なのは、
「数字が平均に近いか」ではなく、
「自社の理念が、働き方や賃金制度に反映されているか」です。

理念に基づいて制度を整え、その結果として取得率や満足度が上がる。
この順番を間違えないことが、長期的に安定した組織づくりにつながります。

 

 

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